「!? なっ、なに!?」
「や、何って。
つーか、そっちこそ何やたら俺の後ろひっついて歩いてんの」
んなわざわざ俺の見えねーとこ歩かんでも
そこ来て歩けばいーだろ。
ぶっきらぼうにそう言ったかと思うと、
自分のいるすぐ真横を
ただ黙ってアゴで促した翔に、わたしの体が再びビクリとする。
「それに、んな黙って後ろ付いて来られっと、逆にスゲー落ち着かねーんだけど…」
「ハッ、そか、ごめ…;」
「……」
とっさに気がつくも
頭の中はものすごい緊張で、あからさま…しどろもどろな言動になってしまう。
結局、そのままここで立ち往生を続ける気のわたしに
翔はすっかり呆れてしまったのか
突然ハー…っと長いため息をはきだしたかと思うと、わたしから背を向け
ふいにボソッ、とこっちからは聞き取れないような声で何かつぶやいた。
「…んな警戒しなくても。
こっちだってもうさすがに諦めてっから、心配すんなよ」
「え?」
「いや、なんでもね、つーかもう着いたし」
さっさと春野とかいう面倒な女見つけて、俺らも戻ろーぜ
それでも本音はかったるいのか
わざと強調するように声を出してきたかと思うと
そのままスタスタと早歩きでホテルへと入って行ってしまった翔に
わたしはとっさに聞き返すこともできず
その場で立ち尽くしたまま
ふとさっき翔に言われた言葉を思い出してうつむく。
「……」
“つーか、そっちこそ何やたら俺の後ろひっついて歩いてんの”
……だって
“あ、あの翔っ…!さっきはごめ…”