ようやく意識がはっきりしてきたわたしは
キュッ、と水道の蛇口をしめる。
“くれぐれもどちらかが来なかったり、遅れる事のないように。いいな”
…本音は気が進まないけど
ミーティングにはちゃんと参加しなきゃ…。
先生もそう言ってたし
なにより修学旅行は入学して、一番最初の大事な学年行事。
引き受けてしまったからには、ちゃんとやらないと…。
それより……
「……」
しばらくのあいだ、自分の姿が映った鏡の前に立ちつくしながら
わたしはふと、さっき女の子たちと会話していた翔の姿を思い出す。
“初めまして。あの、あたし、三浦って言います”
“さっきの広瀬くんのシュート、すっごく感動しました!”
“中学のときはサッカー部だったんですか?”
「……はぁ」
今日のわたし、やっぱり変だ…。
翔が他の女のコと話しをしてるのなんて
今までたくさん見てきたし、別に珍しいことじゃないのに。
なのに何で今日に限って
こんなに胸が痛くて、苦しいんだろう…。
“俺も加奈子苦手だし。つか、好きじゃねーし”
それとも昨日の言葉
やっぱりまだ引きずってるのかな……。