その名前に思わずドキッとして
すぐさまハッと後ろを見ると

向こうもたった今、このホテルの前へ到着したばかりなのか

声が向けられた先の方では
上着のポケットに手を突っ込んだまま、なにやら無愛想な態度で黙々とこっちまで近づいてくる翔。


その隣には翔の友達でもある健くんの姿もいて

それを見た同じ2班の男子たちがまるで飛びつくように翔たちの元へと群がった。


「もー、まじでどこ行ってたんだよ!3人ともケータイは繋がんねぇし」

「わり…;」

「ごめんね、ちょっと色々ゴタゴタしてて」


何やら機嫌が悪いのか、
さっきからやたら無言を突き通そうと押し黙る翔の代わりに

一緒にいた健くんと三浦さんが申し訳なさそうに代弁する。


しばらくの間、その光景を遠く離れた場所から目の当たりにして、

わたしは自分の胸の奥が、ひどく締めつけるような感覚がした。




“俺、先ホテル戻るわ”


“おいっ翔…!待てよ!”


“待って翔くん…!”




―ズキ



あ……


そっか…。



今までずっと

――三浦さんも、一緒にいたんだ……。




「……」



そんなことを思い、一人何も言い出せずにいると

ふいに、今までこっちを見なかった翔と目が合った。