「そっか。それ聞けて、安心した」

「っごめ……」

「あー謝んないで。加奈子ちゃんが謝る必要ないから。ホントないから!
まぁ正直、未練…みたいなものは感じる、けどさ…、
でも前に俺、加奈子ちゃんにはいつでも笑っていてほしいって言ったじゃん?
あれ、本当にそう思ってるから」

「!」

「だから早く広瀬くんとは仲直りして
加奈子ちゃんの本当の気持ち、ちゃんと本人に伝えてあげて……」


好きな子が泣いて悲しんでいる姿よりも

俺は、広瀬くんと本音で笑いあってる加奈子ちゃんが見たい。


そう言って、どこか穏やかで優しい眼差しを向けてくれた直哉くんに
驚いたわたしは目を見開く。


「! 直哉くん…」

「うっわ、今自分で言ってすげーハズっ!」


我ながらくさいこと言うな俺;


頭の後ろへ手をまわしながら
ハハッ…と恥ずかしそうにして苦笑した直哉くんに

わたしの目からは再び涙がポロポロとあふれてきて、ゴシゴシとまぶたをぬぐった。


「直哉くん、ごめん、ごめんね…。
ほんとに、ほんとうにありがとう…」

「……」



“受験が終わって、予備校に行く必要も無くなって。
もう会えないって、そう諦めかけてたらさ
高橋さんも、この高校受験してて。
気づいたら同じクラスにいるし
しかも今はちょうど俺の真ん前に座ってるしで。
何かちょっと――運命感じた”



もし…――、

もしも直哉くんがいなかったら

出会えていなかったら。


きっとわたし、自分の気持ちに一生気づけないどころか

翔のこと、ずっと苦手で――キライなままだった。




“わたしは翔のこと、別に何とも思ってない”



だからわたしはもう、自分の気持ちにウソつかない。

どんなことがあっても、もう逃げない。



――これからは自分の気持ちに素直になって、この想いを翔にちゃんと伝えるんだ。



そしてそれが、今まで何度もわたしを支え続けてくれた直哉くんへの

精一杯の恩返しでもあると思うから…。