「……」




“だからわたしは翔のこと、別に何とも思ってない”


“俺、先ホテル戻るわ”


“待って翔くん…!”





ズキ…




“俺だって、本当はあいつよりも前から加奈子を見てた。ずっと、好きだった…!”


“ガキん時から、ずっと!”




「っ…――」





ザッ…




「!」




そのことを思い出すうち
だんだんとこの目も虚ろになって、もう何も考えられなくなっていたそのとき

突然――背後から誰かの足音がして、わたしはとっさにハッと我にかえる。



そのまま急いで後ろを振り向いた瞬間

そこに立っていた人物の顔を前に、わたしは思わずこうつぶやいていた。



「……直哉くん」