「……っ?」
シン……
でもこの時、不思議と痛みは感じなくて。
誰かによって支えあげられていた腕に、わたしはエッ?と目を開く。
「……。加奈子ちゃん?」
「…っ?え?」
「やっぱり、加奈子ちゃんだ。
良かった!会えて」
“気をつけて行ってくる”
するとそこでわたしが目にしたのはやっぱり
忘れ物を取りに部屋へ戻ったまま、
それっきりずっと会えていなかったはずの、直哉くんの姿で。
一人ぼうぜんとするわたしを前に
直哉くんはひどくホッとしたような溜め息をはいた。
「すごい、心配した…」
「直哉くん、どうして?なんでここに……」
「探しにきたんだ加奈子ちゃんを。
…話は勇樹たちから聞いてる。あのあと俺がいない間に、広瀬くんが来て
その…加奈子ちゃんを連れ出しに行ったって…」
「……」
「とにかく、今は早く上へ戻ろう。俺についてきて」
「あ……」
そう言って
今はここで説明するよりも先に
直哉くんがわたしの手をとる。
そして手を引かれるまま、二人一緒にこの場を離れようと駆け出したそのとき
後ろから突然――声がした。
「加奈子!」