後ろで聞こえた誰かの声に足を止めることなく
目の前の長い真っ暗な廊下を、わたしはただ無我夢中でひた走る。


「…っ、はぁ、はぁっ」



ドクン、ドクンッ…



“目、閉じろよ…”


“さっきのあれで、さすがの加奈子も、気づいたと思うけど”


“俺は、おまえが――”



うそ、うそだ

そんなのうそだよ……。


だってあの翔がわたしを「好き」なんて、

そんなの信じられるわけない。


今さら信じられるはずないのに……!



「加奈子ちゃん!」



―でもその時


なぜか突然、直哉くんの声がして
わたしはハッと我にかえる。


すると目の前を
直哉くんにも似た人影が、いきなりバッ!と視界に飛び込んできて



「―――!」



その瞬間

わたしはとっさに目を押しつぶっていた。