――コツン
「!」
すると今の悲鳴が外の方にまで響いたのか
床を伝って、一瞬その場でピタッと立ち止まったような足音に、
わたしの体がビクッ!とする。
そしてそのクツ音は再び歩き始めたかと思うと
だんだんと早足でこっちへ向かってくる。
――カツ…、カツカツカツ
!!……や、やっぱり
きっと今のでここにいるのが気づかれたんだ…。
どうしよう、このままじゃ見つかる…
こっちに来る…!
「加奈子」
そう思ったら一気に怖くなって
体中がカタカタと震えだす。
そのまま一人動揺するわたしに、
今まできつく身を寄せていた翔が
いきなりわたしの顎をつかんで強引に振り向かせる。
…――!?
壁の向こうでは、とっさに何か感づいたように
ちょうどこの部屋の前でピタリと止まった足音。
同時に、布団の下では
翔がいきなり顔を近づけてきて
(! えっ……?)
思わず瞳を見開いたわたしに
翔はこう囁いた。
「目、閉じろよ…」