「……っ」


…なんで？


なんでこんなことするの？


よりにもよって何で

どうして今こんな状況のときに、いきなりそんなことしてくるの…――？


部屋の様子は今どうなってるかも分かんなくて、
健くんや、他の男子たちだって近くにいるかもしれないのに

黙っていきなり手なんか握りしめてきた翔に、わたしの気持ちは複雑になった。


だからって大きな声を出すわけにもいかず、
今はただ必死に逃げ出したい気持ちをこらえる。


しばらくそのまま抵抗しないでいると


右手は繋がれたまま

まるで後ろから抱きかかえられるようにして
翔がわたしのお腹あたりへ腕をまわしてくる。


そして少しの間、ジッと動かずにいたかと思うと

一瞬どこか抑えきれなくなったように、翔が勢いよく体を抱き寄せてきて…


「！…ゃっ」


その瞬間、とっさに怖くなったわたしはギュッと目をつぶる。


そのまま小さく悲鳴を出しかけたとき

突然廊下の方から、――足音がした。