「い、痛っ……翔!翔ってば…!」
真っ暗で誰もいない通路内を、わたしの叫ぶ声だけが響く。
「……」
でもそんなわたしに
翔はあきらかに怒ってるのか
明かりの消された薄暗い廊下で、
うっすら影になって見えるその後ろ姿は、一度もこっちを振り向こうとしなくて。
みんながいた部屋からムリヤリ連れ出されたきり
翔はわたしの手首を堅く握りしめてつかんだまま、ひたすら黙ってズカズカとどこかへ連れていこうとする。
「~~~っ!…もういいかげん離して!」
とうとう手足の力も限界になり
廊下の一番壁際まで無理やり連れてこられたところで
わたしは翔の手を力いっぱい振りほどいた。