意外なわたしの発言に
今までゲームに熱中していた勇樹くんたちも
このときふと動かしていた手を止め、一斉に「おっ?」と言った顔でこっちを振り向く。


そしてここにいる全員の視線がとたんにわたし達の方へと向けられる中

その中心に立つ直哉くんは
しばらく目を開いて固まっていたあと、やわらかく微笑んだ。


「…ありがとう加奈子ちゃん。でも何かあったら大変だし、俺一人で大丈夫。
それに、ちょうどこのすぐ真下の部屋まで降りて取ってくるだけだから。ダッシュで行って、そっこう戻ってくる」

「そ、そっか。…でも」


そこまで言いかけようとして
でもどこかその先を口にするのをためらったわたしに

ちょうど部屋を出ようとしていた直哉くんが再び「?」とこっちを振り向いた。


「…加奈子ちゃん?」

「もしかしてまだ他の先生たちが見回りでいるかもしれないから
その…き、気をつけてね」


精一杯の言葉でそう伝えて
照れくささから顔を俯かせてしまったわたしに、直哉くんが驚いたような反応を見せる。

そしてしばらくの間そこでジッと立ち止まっていたかと思うと
すぐにニッと嬉しそうな瞳をして笑った。


「うん。わかった。
気をつけて行ってくる」

「……」

「…じゃ」


そう言って、直哉くんは物音を立てぬよう、わざとゆっくり部屋を出ていく。


かすかに開いていた襖のそでが、ソッ…と優しく閉まった。