「……」
“俺があんなこと言い出したせいで
加奈子ちゃんまで今日一日
明らかずっと暗い気持ちにさせちゃってるよな”
ほんとうは全然
そういうわけじゃ、
“向こうはそうだと思ってない”
ないんだけどな…―――
「ん!…そーいやさ、こん中で直哉と勇樹のポッキー写真見たいってやつ誰かいね?
ほら、例のあのバスんときの。
デジカメでさァ、すんげーいいショットが撮れたんだよ」
そんなことを考えていると
向こうにいた一人の男子が
直哉くんからもらったジュースを口にするなり
「あ」と、何か思いついたように話し出した。
その瞬間、目の前で勇樹くんがあからさまに「ゲッ!」とイヤそうな反応をする中
横ですっかりゲームにのめりこんだ様子のあさみちゃんが
今も画面を覗きこんだまま「なになにっ?」と食いつく。
「すんげーいいショットって~?」
「そりゃあもう、もろ…ブッチュしてるやつ♪」
まるでご近所の奥様に話しかけるように
手のひらをサッとひるがえして口横へ添えたかと思うと
フフフッ♪とあやしく笑ってみせた男子に
あさみちゃんがガバッ!と嬉しそうな顔をあげる。
「えー見たい!今すぐ見たい!見せて見せて」
「んっふふん、あさみならそー言うと思ったわよ」
わざと奥様口調で返しながら
その男子はさっそく持ってきた荷物に手を突っ込んだかと思うと、中でゴソゴソとデジカメを探し始める。
が、いつまで経ってもお目当ての品は見つからず…
「んん?…あ、やっべ。部屋に忘れてきたわ」
「「えぇー!?」」
なにそれぇ~
自分から言っといてさ~!なに?実は天然?
ちっげえし(笑)
つか、天然なのはあさみだろ!
―いいショットがあるんだと言い出してみたはいいものの…
例の写真が収めてある、肝心のデジカメ本体を自分たちの部屋に置いて来てしまったらしく
ひとりキラキラと瞳を輝かせていたあさみちゃんは、すっかりキゲンを損ねた様子。
そのまま一気にブーブーと文句を言われている中
慌てたように、とつぜんその男子がこっちを振りむいて声をあげる。