「…っじゃあ
オ、オレンジで」

「オレンジね。了解」


慌ててわたしがそう答えると

ニコッと目を細めた直哉くんはさっそくオレンジのふたを開け、ボトルを下に傾ける。


目の前では、コポコポと音を立てながらゆっくりと下へ注がれていくオレンジジュース。


しばらくその様子を黙って見ていると
ふいに隣で直哉くんがボソリとつぶやいた。


「今日はごめん」

「…!えっ?」

「今日ん昼、俺がいきなりあんなこと言いだしたせいで、
一気に場の雰囲気を悪くさせたっつうか…
その…何も悪くない加奈子ちゃんまで今日一日
明らかずっと暗い気持ちにさせちゃってるよな。ほんと、ごめん…」


そこまで話したかと思うと、
直哉くんは持っていたペットボトルをテーブルの上にトン、と置いた。

そのままもう片方の手で「ハイ」と優しく差し出された紙コップに
わたしもハッとして手を伸ばす。


「…あ、ありが」

「あ。おぉ~い直~!俺んもジュースちょーだい」

「あたし紅茶ー♪」

「俺ソーダね~」


とっさにお礼を言おうとしたのもつかの間、

向こうですっかりあさみちゃん達とゲームに熱中しだしていた様子の勇樹くんが、
ふとこっちに気づいたように背中をのけぞらせる。


するとそれに続くように
次から次へと、自分らが飲みたいものを一気にハイハイッと主張してくるみんなに

頼まれた側の直哉くんは「そっちは自分らでいれろよ;」とつっこみながらも
最後は結局、全員分のジュースをせっせと用意していく。


「直、サンキュー♪」

「直哉くん、愛してる(笑)」

「持つべきもんはやぁっぱ友だよな!」


「つぅか勇樹たち調子良すぎだろほんと;」


そしてようやくつぎ終えたジュースを渡しに、みんなの方へと走って行った直哉くんを見て
わたしはまたボンヤリとうつむいた。