「えっ加奈子どーしたの!?
さっきから全然おハシ進んでないよ?!」
そのことを思い出したらまた一気に気分が暗くなって、
ますます一人でドンヨリしていると
さっきの揉めあい事はいつの間にか終わって
お互いもうとっくに気が済んだのか
すっかりケロッとした様子のあさみちゃんが、
いきなり横からギョッとした声をあげた。
そのまま心配そうな表情でこっちを見つめ、大きく覗き込んでくるあさみちゃんに
わたしも思わずハッと気がついて、とっさに笑い返す。
「…あ、ちょっと。
なんか、お腹すいてなくて;」
「そ、そーなの?体調良くないとか?心配…;
…じゃあ代わりにあたしが加奈子の分も食べたげる!」
そう言って
あさみちゃんは突然
全く手のつけていない、まんま殻(カラ)で覆われたわたしのカニを
今度は丸ごとゴッソリ両手で持ち上げたかと思うと
ものすごくニコニコした顔で、自分のお皿へと移しかえていった。
そのまま何とかして中に詰まった白い身を、今すぐにでも取り出そうと
目の前に構える、リアルたらばガニとグイグイ奮闘するあさみちゃんに
それを見た詩織ちゃんが慌てたように横から手を伸ばす。