「そこのカニ、もーらい!」

「あぁーっ!?
わたしのたらば!」


―それから数分後
だいぶ遅れて自分も宿舎の部屋に入ってくると

そのあとは大急ぎであさみちゃん達と入浴や支度を済ませ、
今は旅館の2階にある「大広間」。


「うっわやべ、マジでうまそ~!」

「いっただっきま~す♪」


夜の7時30分を過ぎると
しだいに広間は夕食を食べに集まってきた、同じ1学年の生徒たちで勢ぞろいし


あらかじめ用意された横長いテーブルの上には
豪勢な海鮮料理やお刺身、天ぷらなどが盛りつけられた、
大きなお皿やお鍋がいくつも、一つのおぼんにズラッと乗せられていて

あまりの豪華さに
気づくと広間内は、ガヤガヤと北高生の笑いや話し声でにぎわい始める。


「…うん。やっぱりおいひ♪」


そんな中、ひとり真ん中の座布団に座って
嬉しそうに夕食を頬ばり出していたあさみちゃんが突然――

横で詩織ちゃんが大事に取っておこうとしたなんと、メインのカニを
いきなりヒョイと箸でつついて
つまみあげたかと思うと
一気にパクッ!と口の中へ放り込んでしまった。


そのまましばらくカニをモグモグひたすら味わっていたかと思うと
あっさりゴクンと飲み込んでしまったあさみちゃんに
詩織ちゃんが本気で怒りだす。