「…お、おおっとぉ!?
最後の最後でまさかの実行委員ペアがァ?!」


「再び盛り上がって参りましたっ!」


「あれ、つかそういや
学校でもなにげ席、隣だよな。翔と高橋ちゃん」


「ん?つーことは……
おいおいおいっ♪
もしかしてそーゆうことォ!?」


「翔!ここはひとつ、
俺らの前でも、その彼女に“男!”ってとこ
見してくれよ~♪」


「えっ、ち、ちが…!」


ペアの相手があの翔だと分かったとたん

なんだか突然おかしな方向に話しが膨らんでいって

わたしはとっさに誤解を解こうと口を動かすものの

男子たちの大きな騒ぎ声によって
それはあっという間にかき消される。


えっ…

ちょ、ちょっと待って…;


今こんな状況になってるのは

そもそも男子たちが言い出したこのゲームがそうさせただけで

それ以上のことなんか全然…あるわけないのに


何かと誰かをくっつけたがる男子たちが
次々と声を出して、強引にはやし立てようとする。


すると女の子たちも
男子たちの言うことを本気に思ったのか
だんだんとザワめき出して…


「えっ、あの二人つきあってんの?」

「全然知らなかった」

「ショック…」


そんな会話がバス内で次々と交わされていく中

困ったわたしはあわてて前の方に視線を向ける。


すると
今こんな状況になって
ぜったい否定されると思ったのに

こっちを振り向いたまま
意外にも強い瞳でジッとこっちを見ていた――翔。


(! え……?)


少しも視線をそらさない、その強くてまっすぐな目は

昔のときから少しも変わらず、おんなじままで…


その眼差しに押されるように
わたしは思わず「違う」と言いかけた言葉を
ゴクッと飲み込んでいた。