「……」


目の前にはぼんやりとガラスに映った自分の顔。


わたしはおそるおそる顔を近づけて、窓の外をのぞきこむ。


すると今日一日、あれから翔はまだ家に戻っていないのか

それとももう眠ってしまったのか


小さい頃には何度も行き来したことのある…

真向かいに見える翔の部屋の窓からは――明かりがひとつも付いてなかった。



“最後に俺のゴールが得点に入ったって…加奈子ちゃん、そう教えてくれたけど
でも本当は俺、あんとき広瀬くんに……”



“俺の体を心配するヒマがあったら、まずは自分の身の心配をしろよ”



このときなぜか、翔に言われた言葉が頭をよぎり

わたしはとっさに下を向いてうつむくと
あのとき冷たく振り払われた自分の手をギュッと握りしめる。


そして小さく、ポツリとこうつぶやいていた。



「足、大丈夫かな……」