「…加奈子?
起きてるの?お母さんだけど」


その声に顔をあげると
いつまで経っても下におりてこないわたしを心配に思ったのか

階段をあがり、様子を見にやってきたのは、お母さんだった。


そのままドアノブに手をまわして、中へ入ってこようとするお母さんに
わたしはハッとケータイを耳に戻す。


「ご、ごごめん直哉くん。今お母さんに呼ばれてて…。
あとでもっかい、かけ直してもいいかな?!」

《え?あ、うん。…わ、わかった》

「ごめんね!じゃ、また後で」


ピッ


電話の向こうでは、ややあっけに取られ気味の直哉くんをよそに

わたしは、なかば一方的に通話を切る。


同時に、キィ…と部屋のドアが開いて、お母さんがひょっこりと顔を出した。