そのとき
わたしの真上をふいに大きな影が覆いかぶさったかと思うと

突然、翔が首筋に顔を埋めてきて、ハッと目を開く。


「っ!…や、やめ…」


すぐさま異変に気づき
とっさに抵抗するものの

強い力で腕を押さえつけられていてビクともしない。体が動かない。

怖い…。


―プチン


「!」


現実とは思えないこの状況にカタカタと足が震え、声も出せずにいると

上に乗りあがっていた翔が、
制服のリボンを取りボタンに手をかけようとして、ギュッ!と目を押しつぶる。


「~~~っ!」


イヤっ…なんで?

なんでこんな事になってるの?

なんでこんな事するの…――?


こんなのやだ
やだよ…


助けて

誰か、助けて…!!



「…加奈子」

「……っ」


錯乱とする意識の中

とっさに心の中で強くそう叫んだ瞬間

きつく押し閉じたまぶたの向こうで、ある人の顔がフッと浮かんだ。



“加奈子ちゃんが来てくれんの、ずっと待ってる”