え…?
「おまえ、アイツに優しくされたからってその気になってんじゃねーよ。
…どうせ負けたことに変わりねーくせに。どいつもこいつもバカみてぇ」
「……」
「ま、その直哉ってやつもお前と同じ単純脳同士お似合いなんじゃねえの?」
思ってもいなかった翔からの言葉に、あぜんとするわたしを
翔はわざと見下しながら
まるで感情の入っていない口調で冷たく吐き捨てる。
そのままフンと鼻で笑い、足で壁をガン!と蹴りつけてきた翔に
わたしは思わず目をつぶると、床につけていた自分の手をグッ…と握りしめた。
「…なんで。何でいきなりそんなこと言うの?
そんな事言うために
わざわざわたしを騙してここに連れてきたの…?」
「……」
「でもわたしは翔の言うような単純な気持ちで直哉くんに会いに一人で保健室まで行ったつもりない。絶対ない」
今までは一方的に責められても、ただガマンするだけだったわたしが
今は直哉くんをかばい、歯向かってきた事に、翔の目つきがムッと険しくなった。
それでもあの時見た直哉くんの笑顔を思い出すたび
うまく言えない気持ちが込み上げてきて、声が小さく震え出す。
じわじわと、あのときの光景がよみがえってくる。
「だってあの時…
ケガした直哉くんが運ばれてくのを遠くから見てたあのとき
もしも直哉くんの身に何かあったらって…、そう思ったら気が気じゃなかった。すごく怖かった!」
ただその一心で、わたしはあのとき直哉くんの所へ走って行ったのに
それを否定するような言い方されたくない。言ってほしくない。