「―ワリィ。足が滑った」


そう言って、

床へと転がるサッカーボールを何事もなかったように拾い上げた……翔。



「す、滑ったって……」


どう見ても、“滑った”で済む加減じゃないだろ。


そう言わんばかりに

いきなりボールを蹴飛ばしてきた翔に対して、
困惑の眼差しを向けるのは、アドレスを聞いてきた男子。


だけどその人がそんな反応を見せるのも、ムリないと思った。

だって、確かに翔はわたしたちに向かって、
わざとボールを飛ばしてきた。


そして明らかに今、

その人へ敵意を向けている翔の瞳が、それを物語ってると思ったんだ。