その言葉を思い出した瞬間
わたしはつかんでいたカバンのヒモをギュッとにぎりしめていた。


「…ごめん。
実はこのあと修学旅行の打ち合わせがあってその、行けないや……」

「んっ?あっ!そかそか!
加奈子、そういえば実行委員なんだよね。
えと、もしかしてこれから?」

「うん…。せっかく誘ってくれたのにごめんね。
ほんとはすごい行きたいんだけど…」

「いいの!いいの!仕方ないよぉ!委員の仕事だもん!そっち優先しないと!
うちらの事は気にせずいっぱい話し合ってきちゃって♪」


そう言って
あさみちゃんはニッと笑い、指でVサインを作ってみせる。


それでもわたしの気持ちは何だか晴れず、「うん…」とうなずいたきり肩を落としていると

少しして
詩織ちゃんや1班のみんながぞろぞろとこっちにやってきた。


「ど?あさみ。加奈子も行けるって?」

「あ、それがね
加奈子、これから修学旅行の委員会があるらしくて行けないって…」


二人の会話に
さっきまで男友達とプロレスまがいな事をして遊んでいた直哉くんも
途中「エッ」と顔をあげてこっちを見た。


「…え?加奈子ちゃん、もしかして今日来れない?」

「あ、うん…。
今日はこのあと、委員会が…」


わたしの言葉に
直哉くんは一瞬何かに反応したようにピクッと肩を動かしたかと思うと
とっさに首の後ろへ手をまわした。


「委員…そっか…
加奈子ちゃんも、確か修旅の実行委員だったもんな…」


シーン…


わたし一人だけが行けないことになんだか微妙な空気になってしまっていると

詩織ちゃんが落ち着いた物腰で口を開いた。