しっし!と
手を上へ軽く払いながら

顔はひたすらそっぽを向いてタバコを口に含む先生に


何か状況を察した様子の直哉くんが少しして大人しく頭を下げ、椅子から立ち上がったかと思うと

一人ぼう然と座り込むわたしに向かい、そっと声をかける。



「…行こう?加奈子ちゃん」

「あ…、うん……」



“自分自身だけじゃなく、あなたの大切な誰かまで傷つけることになるわよ”



―それでもわたしの頭は、どこかぽっかりと穴が開いたように
ひとり上の空で…


心ここにあらずといった心境は拭いきれないまま、やっとの思いで自分も重たい腰をあげる。


そのまますごすごと
ドアノブに手をかけ、保健室を後にしようとするわたしに


今まで背を向けたまま
黙ってタバコを口にふかしていた先生が、ふいにこう口を開いた。