「その…も、申し訳ないです。
けどこうなったのには一応それなりに理由があるっつーか
じゃっかん誤解してます」

「ん?なに?
言ってみなさい新垣直哉くん」


そう言って

先生がカタッと、イスをもう一度こちらに動かして「ん?」と挑発的にかしげてみせると、

目の前にいる直哉くんは
自分の顔が赤くなるのを隠すように、とっさに首の後ろへ手をまわした。


「その、見舞いに来てくれた事はすげー驚いたし、今でも信じられないけど…
実際俺がただ一方的に加奈子ちゃんを好きに思ってるだけで彼女は全然悪くないっつーか、
そのッ!ガマン出来なくて手を出そうと動いたのは俺なんで!
だから責めるのは俺だけにし…」

「あ゛ーッかゆいっ!
近くに虫が飛んでるわけでもないのにやたら腕がムズがゆくてイライラする!」

「………。?」

「本人たちは二人の世界に浸ってるだけなんだからそりゃもうさぞ楽しくて幸せでイイんでしょうけどね
こーゆうのって、何の関係もなしの第三者が一番鳥肌もんで
実はいっちばん迷惑してるってこと、分かってる?
そこの、まだ10年そんじょそこらしか生きてないツメの甘い少年A」

「あの、春野先生…?」

「つまりね、あたしが言いたいのは。
彼女に何かすんのも、かばうのもあなた達の自由だし勝手だけど。
要は全て時と場所をきちんと選びなさいって事なの。
あとの青春は家帰ってからいくらでも二人で仲良ーくやんなさい?
でもここではお互い手を繋ぐのも一切禁止!
ほらあんた達!昼休みはもう終わったんだから!とっとと教室戻りな!」