「げ、呼び出し?
…言われてた資料提出すんの後回しにしてたのがバレたのか?
わるい!面倒だけど先ちょっと行ってくるわ」


今のはわたしの聞き間違いじゃないのか

先生の口から出たとは思えないような爆弾発言がいきなり飛び出したかと思うと

春野先生はサササッとデスクに散らばっていた書類をかき集めて腕に抱え、
その場からスクッ!と立ち上がった。


そのまま急いで保健室を出て行こうとする先生に、わたしは「ヘっ?」と顔をあげる。


「え、あのっ、先生…」

「すぐ戻るから。そのあいだ、あなたはそこにいる彼と仲良く話でもしてて?」


な、仲良くって…


急すぎる展開に、一人あ然とするわたしを横目に

先生はドアの隙間から、わざとっぽく片目を閉じてみせたかと思うと

「じゃね♪」と軽く手を振り、そのまま保健室をあとにしてしまった。



バタン!



勢いよくドアが閉まり

バタバタと先生の走っていく音が遠くなっていく中


とたんにシン、と静まり返った保健室内で


「……」


わたしは
ケガをした直哉くんと――ふたりきりになった。