「ねぇ、それよりちょっと。
もしかして、今あそこにいる彼…あなたの探してた人?」

「…えっ?」

「ほら。昨日、言ってたじゃない。
あたしが急用から席を外して戻ってくる間、
ここに背の高い男がいなかったか、って」


よく耳をこらさないと聞こえないくらいの小さく潜めた声で

先生は、どこかまくしたてるような口調でそう囁きかけてきたかと思うと


今も後ろで大人しく座っている直哉くんの事を、さり気なく指さしてみせた。


思ってもいなかった先生の言葉に、わたしは一瞬ポカンと口を開く。

そしてとっさに、昨日の記憶をたどってみた。


昨日…?

背の高い、男?


……。


「!」


あっ……



“さっきまでココに
髪を茶色に染めたその、背の高い男子が居ませんでしたか?”