「たった今ちょうど、彼を教室に送り帰そうと思ってたところだったのよ」


先生はそう言って

ケガの治療に使っていたと思う救急道具を、箱の中へ片づけ始めた。


その様子を、わたしは一人足をソワソワとして見つめながら、ずっと気になっていたことを聞いてみる。


「あの…先生、それで直哉くんのケガの傷は…」

「ん?あぁ。
ここに運ばれてきた時には足の出血が止まらなかったみたいだけど。
でもすぐに応急処置を施しておいたから。
1~2週間もすればじきに治るはずよ。安心して」

「!あ、ありがとうございます…!」


そ、そっか。

元通り、ちゃんと治るんだ。


よかった…。


それが分かった瞬間
一気に緊張の糸が解け

思わずホッと胸を撫で下ろしたわたしに


横でガチャガチャと音をたてて
持ってきた救急箱を棚のトビラにしまいながら


突然、先生が後ろからヒソッと耳打ちしてきた。