「! 加奈子ちゃん」

「…ん?…お、誰か来たと思ったら。
こんな真っ昼間にどした?あなたもケガ?」


目が合うなり
どこか驚いた反応をした直哉くんに気がついたのか、

ちょうどわたしに背を向けて腰かけていた保健の先生が

回転式の椅子を突然横にクルっと動かし、こっちを見た。


そのまま勢いよく立ちあがって、こっちに近づいてきた先生に
思わずわたしの心臓がドキリとする。


でもすぐさま首をブルブルと横に振って否定すると、とっさにこう口を開いていた。


「ち…!ち違うんです!
わたしは全然、自分がケガしたとか、そんなんじゃなくて…」


とっさに自分の口が動いて言い訳するものの

結局どう説明したらイイのか分からず、しどろもどろになってしまう。


尋常じゃないくらい顔中を真っ赤にして
一人ギクシャクとたたずんだ様子のわたしに、先生も直哉くんもすっかり顔をポカンとさせている。


「…え。えぇーと、
…そ、それじゃああなたはどうしてここに?来たの?」


そんなわたしを見かねてか、先生がアゴに指を当てながら困ったように尋ねる。


その質問にわたしはハッと顔をあげたかと思うと

精一杯自分の声を振りしぼり、こう答えた。



「わ、わたしは、直哉くんのケガの事がその、心配で……」