「はい。これでもう大丈夫」

「ありがとうございます」



授業の終わるチャイムが鳴り

校内がとたんに騒がしくなりだした、――お昼休み。


2階の踊り場では、持ってきたお弁当を手に、円を作って座り始める女の子たちや

ドカッと派手にあぐらをかきながら、コンビニの袋を広げる男子たちとで、にぎわい返る。


そんな中

わたしはひとり、保健室の前に立ち尽くしていた。





「……」


コンコン!


途中、何回か迷いながらも、思い切って顔をあげ
目の前のドアをノックしてみる。




するとしばらく経ってすぐに


「ハーイ?」


という

どこか明るい返事が向こうの部屋から返ってきて、わたしは急いでドアノブに手を伸ばす。


そのまま「ガチャッ」と勢いよくドアを開け

おそるおそる、隙間から顔を出したわたしに


中で、保険医の先生と向かい合わせに座ったまま
何か話していた様子の直哉くんが、ハッとこっちを向いた。