「…行ってきます」


―翌朝、制服に着替え、支度を済ませたわたしは

気持ちが落ち込みながらも、学校に登校するため家を出る。


でもこのとき

ちょうど同じタイミングで、通学しようと自転車に乗り込む翔の姿を見かけ、目が合った。


「翔……」

「……」



“俺も加奈子苦手だし。つか、好きじゃねーし”



一瞬、翔に言われた言葉を思い出して、胸の奥がズキリと痛む。


だけどそんなわたしに、翔は一切口を開くことはなく

少しの間、立ちすくむわたしをジッと見ていたかと思うと、

フイとそっけなく顔をそらし、無言でペダルを走らせていった。



そのまま見えなくなってしまった翔を背に、わたしはギュッと胸をおさえた両手をにぎる。


…昨日のことはもう、忘れよう。忘れなきゃ。


無かったことにするんだ。