「…へーえ」
ひと通り、その内容に目を通した様子の翔が、しばらくしてプリントから顔を離す。
そしてフッとわたしを見下しながら言った。
「加奈子の苦手なものは
隣の席の人。
今わたしに向かって紙ヒコーキを飛ばしてきた人。
広瀬翔。
つまり全部“俺”ですか」
「……」
「苦手なモノの欄に、わざわざ真横に座ってて、
しかも馴染みの名前書くなんて、加奈子も見かけによらずイイ度胸してんね」
「…っ…」
「なぁ加奈子。聞いてんの?」
「…!いっ……」
カタカタと震えてこわばるわたしの顎を、
翔の細長い、骨ばった指先が掴んでとらえ、
そのままクッと上へ持ち上げられる。
息がつまりそうなくらい
あからさまに顔を近づけて挑発してくる翔に、わたしはギュッと目をつぶった。
それでもわたしは決して否定しないし、謝ることもしない。
だって、そこに書いたことが全てで、事実だから…。