「お二人さん、細々とがんばってんねー」

「俺らも手伝っちゃうよ~ん」

「つか、高橋ちゃんだっけ?これ、番号ふってきゃいいの?」

「あっ、…お、お願いします」


お互いしばらく黙っていると、

翔の友達っぽい感じの人たちが、様子を見にきたのか、声をかけてきた。


そのままふいにわたしにも話しかけられて、ビックリして頷くと
翔が突然横から口を出してきた。


「健は紙ちぎんのでもやってろよ」

「えー!まじかよー。だるっ」

「つーか、番号の割り振り分かんね。班って何個つくんの」

「知らね」

「って、うぉい!しらねーのかよっ!クジ引きにしろっつったの翔じゃん!」

「たのむよ実行委員~」

「ぎゃはは」


…認めたくないけど

やっぱり翔はすごい。本当にすごいって思った。

だって翔が口を開いただけで、みんなが顔をあげて、反応してくれて。

こうして人が集まってくる。


中学のときから、ごく当たり前にやってきたことでも

翔がそれを口にして、行動する。


それだけでふしぎと、前よりももっと、すごく意味があることのような…

そんな風にさえ、思えてくる気がするから。


「なんかそっち楽しそう」

「うちらも混ぜてー」


そのままワイワイ騒いでいると、クラスの女の子たちもチラホラと集まってきた。

その中には、三浦さんの姿もあって。


入学してきたばかりで、まだぎこちなさが抜けなかったクラスがいつの間にか、

少しずつ、ひとつになり始めていく。


そんな感覚に、わたしは何とかみんなと笑顔を作って合わせながらも、

ふと急に空しくなって、うつむいた。


「……」


“クジ引きでいんじゃねーの”



…もしもわたしが、今よりもっとしっかりしていて

翔と同じ言葉を、あのときクラスの前で口にして、行動していたとしても。

こんな空気にはきっと、ならなかったはずだし、…出来なかった。