「加奈子、まだそれ書いてなかったのかよ。
相変わらずトロくせーのな、おまえ」

「…!」

「わたしの名前はバカナコですって。俺が、書いてやるよ」


すっかり気落ちして、下を向いていたそのとき、

とつぜん翔の笑い声がした。


驚いて顔をあげると、

さっきまでケータイをいじっていたはずの翔が立ち上がり
わたしのすぐ目の前に立っていて…


アゼンとするわたしを横目に

翔はわたしの持っていた自己紹介の紙を強引に取りあげたかと思うと、平然と中身をめくる。


でもその瞬間、一気に空気が凍りついた気がした。


だってそこに、わたしが書いたのは……