「あっでもまだ・・」
そう兄ちゃんに聞こえるか聞こえないかぐらいかの声で言った。兄ちゃんは今度はアズマの方に話しかけていた。兄ちゃんは左腕には龍の刺青をしていて、一見陽気で優しそうに見えるが、目の奥では笑っておらず一瞬恐いと感じることもあった。ハルはまた店内をぐるっと回ってみた。たしかに品物は悪くないと思う。しかし、どこのメーカーなんだか分からない怪しい感じも多少ある。服のタグにはたまにドイツ語のようなもので書かれているものもありなんだかよくわからない。アズマはまださっきの兄ちゃんしゃべっている。ハルはいかにも洋服に興味がありますといった雰囲気を装ってガンズアンドローゼスのデカプリTシャツを手に取った。するとアズマが隣から
「どう?気に入ったのあったん?」
「ん?まぁでもよなんかちと高くねぇ~か?」
「ハル、服なんてそんぐらいするって。もっといいやつはもっとするで」
「う~ん、そんなもんか」
結局ハルはあのカーデガンを買って店を出た。アズマはTシャツ、ジャケット、デニムのジーパンなんだかんだで4万近くあの店で使った。しかし、後日ハルは大学で嫌なうわさを耳にする事になる。