「アズマのツレかい?」
後ろからさっきの兄ちゃんの声がした。
「あっそうですけど」
「そうか、今日はどんなの探しに?」
「いや、別に」
兄ちゃんは聞き流すかのように
「こんなのどう?」
と壁にかかっていた薄手の紺のカーデガンみたいなものを見せてくれた。
「これから夏になるけどまだ雨とか降ると寒いじゃん。だからこういうの一枚買ってシャツの上にはおれば全然違うよ。しかもこれあのウィカーのカーデガン定価13000円のところうちでは9800円で売ってるわけ。もうこれたぶん明日にはなくなっちゃうよ。」
「あっはぁ~」
「とりあえず着てみてよ。あそこに試着できるとこあるからさ」
「あっはい」
ハルは店の奥にある試着室でカーデガンをはおってみた。試着室の鏡を見て思ったよりも似合っていて何かしっくりくる。しかし、これで9800円は高くないだろうか?いつもいっているファッションセンターだったら同じようなやつが三つは買える。試着室から出てくるなり
「どう?悪くないだろー」
「あまぁけっこういいですね。」
「じゃあこれはこっちにおいとくな。」
そういって若い兄ちゃんはカーデガンをレジの近くにに置いた。