ハルはふとリモコンを手に取りテレビをつけた。壁の時計は十時を指している。テレビはちょうど夜のニュースの時間だ。スタジオのアナウンサーが現場のレポーターを呼んでいる。
「約一年ほど前に起きた青木平八郎さん殺害事件の警察の進展はどうなのでしょうか?捜査本部が置かれている栃木県警の宇都宮署前にいる渡邊レポーターに伝えてもらいましょう。渡邊さ~ん?」
「はいこちらは捜査本部が置かれている宇都宮署に来ております。この事件は一年前の十二月に当時小学校に通う親戚の子どもさんと二人で暮らしていた青木平八郎さん六十一歳がなにものかによってナイフで数箇所刺され亡くなった事件です。また青木平八郎さんの金品や骨董品が全てなくなっていることから警察では犯人は押し入り強盗を計りたまたま顔を見られた平八郎さんを殺害したとみて捜査を進めております。しかし、一年経った今、未だ物的証拠が少なく、近所の目撃証言も乏しいため捜査は難航しているようです。」
「分かりました~寒い中ありがとうございました。」
「はい。以上宇都宮警察署前からでした」
画面がスタジオのアナウンサーに変わる。
「どうですか?この事件。原田さんはどのように考えますか?」
アナウンサーが何ちゃらジャーナリストに話をふる。横分けのきれいなおっさんが犯人の心理だの警察の捜査がどうのこうだのべらべら話す。ハルはテレビを消して。机の下に足を伸ばし仰向けになった。天井の半分きれた白電灯を見ながら、今すぐにでも連絡したいやつを胸に秘めてそっと目を閉じた。