五分ぐらいすると来るときに爆音で流していたスタンドアップが流れ始めた。そこからいっきにライブハウスは盛り上がり爆発的な空気に包まれた。ハルは懸命になって右手をあげ曲のメロディーに合わせてジャンプしていた。なかにはライブハウスの端に柱に登って客席にダイブしているやつもいた。アズマはまだライブに完璧には乗り切れてない様子でライブの先頭集団からすこし後ろの場所で右手を挙げ軽く揺らし立っていた。ハルもライブの最初の方は何とか持ちこたえていたが中盤ぐらいになると酸欠を起こしそうになっていた。なにしろライブハウス全体の音楽と熱気が尋常じゃない。ハルは先頭集団から抜けて真っ先にトイレへ直行した。
「おっえ~おっおっおっえ~」
今日来る前に食べたラーメンやらおにぎりやらが嗚咽とともに吐き出された。そこから下からももよおしをしたくなり吐いた汚物の上に用を足した。上からも下からも出したというのはハルにとって初めての経験だった。少なくとも用を足す前に吐いといてよかったと実感した。ハルは体じゅうから全て排出物がなくなった気持ちで再びライブの先頭集団へと戻っていった。