私と綾は、落ち着いて話すことのできそうな喫茶店を探した。
「ここってお見合いの名所らしいよ」
綾が指差した店は、ホテルの1階の喫茶店。
通りからは中の様子ははっきりとは見えない。
ぼやけたガラスの向こうにはたくさんの人影だけが見えた。
綾に手を引かれて、ホテルの中に入る。
ちらっと見えただけでも4組ほどの男女が緊張気味に話していた。
「あれ、絶対お見合いだね」
「うん!あの緊張感は絶対お見合いだよ」
どうしてこの店がお見合いの名所だと知っているのかと綾に尋ねると、意味深に微笑んだ後、サラリと教えてくれた。
歳を誤魔化して参加したお見合いパーティーの帰りに、この喫茶店に誘われて、この上のホテルでエッチしたんだと。
綾は、時々とても遠い存在に思えることがある。
長く付き合っているのに、こうして全く知らない真実が明らかになったりするから。
綾は交友関係が複雑で、私の知らない友達が山ほどいる。
別に綾の友達全員を知りたいとは思わないけど、時々寂しくなったりもする。
私には綾しかいないから。