「男できたっぽくて。私なんか無視だよ。夜中に長電話の声が聞こえてて、泣きたくなった」
綾は、お母さんが彼氏と別れると嬉しいと話してくれたことがあった。
それは私も同じだった。
不幸になればいいと思っているわけじゃなく、別れたら自分のことをちゃんと見てくれるようになるから。
ただそれだけだった。
恋は人を狂わせる。
身近にいる大事な人の存在を忘れてしまうほどに、恋って恐ろしいものなんだと綾は言っていた。
「作戦決行までに、下準備しないとね」
「うん!まずは待ち合わせの店、探そうか」
愚痴って少し楽になったのか、綾はまた明るい笑顔に戻った。