「バレンタインの夜は、ちゃんと行くんだよ?」
「うん」
マンホール。
私と拓登をつなぐ場所。
「でも、本気で会いたかったら、拓登だって私の家に来ればいいじゃん。家知ってるんだし。ってことは、もう私のこと忘れたんじゃん?」
「またそんなマイナスなこと言って。いきなり逃げられた相手の家に行く勇気なんて、なかなかないと思うけどな」
いつの間にか、何でも思ったことを話せる関係になっていた。
自然に。
気を使わずに。
これを言ってはいけないとか、これは言わないでおこう、なんて考えたりしない関係。
思ったことを楽に言葉にできた。
「綾がいればそれでいいよ」
「キモ!!」
数学の自習の時間は、友情を深め合って、終了した。