拓登は、私の手を握った。
温かい手。
優しい温もり。
拓登は優しい人。
彼女もそれはわかっていたはず。
「親父が、彼女に何か言ったんだろうってことはわかってたんだ。でも、それでも俺を信じて欲しかった。ずっと一緒にいた俺の言葉を信じて欲しかった」
拓登はそう言った後に、そんな強い人間はいねーよなって笑った。
その顔があまりにも悲しそうで、泣きそうになる。
人間は弱い。
別れて欲しいと拓登のお父さんから頼まれて、それが拓登の将来の為になるのならと身を引いたんだろう。
彼女の愛は大きい。
何かが少しでも違えば、そんな結果にはならなかったはずなのに。