その時だった。



コンコンっと部屋をノックする音が聞こえ、背筋が延びた。



引き戻される現実。



「チェッ。いーとこだったのに、なぁ?」



ニヤリと笑った碧君と目が合い真っ赤に染まった頬。


手早くあたしの服を直しベットへ運ぶとドアを開けた。



「あ、碧。
愛姫の調子が悪いらしいから碧が運んでくれたって、流湖ちゃんに聞いて」

「少し熱っぽいみたいだけど大丈夫そうですよ」



パパの声だった。



流湖ちゃんが機転をきかせてくれたんだろう。


碧君に連れ去られたあたしは、碧君に運ばれた事になっていた。


流湖ちゃん見てたんだ……。



心配そうにあたしのそばに寄り、



「愛姫、主治医呼ぶか?
顔赤いみたいだし」



小さく顔を横に振り

『大丈夫』

と言うあたしに納得のいかない様子。



でも、


今はパパと目が合わせれない。
凄く悪い事をしたみたいで。

それを


“気持ちいい”


と思った自分が汚く感じちゃって。



ごめんね……パパ。