琉湖、早く帰れ。



そうしなきゃ、俺……。



教師だって忘れちまう。

お前が生徒だって忘れちまうよ。



助手席のドアが開く音が聞こえ、俺は隠し切れない動揺を誤魔化そうと煙草を吸い続ける。

大きく肺まで吸い込むと、フゥーっと吐き出した煙は窓の外へと消えた。



「……嫌ですっ!」



後はドアの閉まる音がすれば終わり。


そう思っていた俺の耳に、大きな声でハッキリと聞こえた声に煙草の煙が気管に入りむせてしまう。



「はぁ!?」



開いたはずの助手席のドアは、バタンッと大きな音をたてて閉まった。