あのキス以来、
俺は流湖の目を見る事が出来ないでいた。
――過去のこと。
あの時の流湖は、そんな顔を見せた気がしたんだ。
ほんのり染めた頬も、少し潤んだ瞳も、全てがなかった事の様に……。
通り過ぎる度に、甘い香りを漂わす輝く髪が俺の感覚を麻痺させた。
俺はどうしようもないくらいに、ハマってしまい抜け出せない底に堕ちているのかも……しれない。
抱きしめたくて、
唇を合わせたくて、
目茶苦茶にしてしまいたくなる時がある。
ただ、
その感情を抑えれるのは
“教師と生徒”
その一線だけだろう。
なりふり構わず、キスした時。
誰かに見られればいいと思った。
そうして、
この“教師と生徒”の関係を誰かに壊して欲しいと願ってしまったんだ。