もう、今なら本当に世界が終わっちゃっても、私は幸せだって言えると思う。
「澄子しか見えねーよ」
だってね?
例え世界が終わっちゃったとしても、この気持ちだけは消えてなくならないから。
「私もっ・・・ウゥ、猛しか見えないっ」
目には見えないけど、しっかり繋がってるって分るから。
再び一つになった唇から、果てない愛が伝わるから。
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どれ位唇を重ねていただろう。
名残惜しく離れた二人の唇は、光る糸で繋がれていた。
そんな光景が恥ずかしくて、そっと視線をはずしてしまった。
「今日1日位・・・勉強は忘れるか」
「え?」
私の腕を持ち、さっさと立ち上がる猛。
「お前に拒否権は無し。今日は朝まで満足させてやるから3月まで我侭言わず待ってろよ?」
「へ!?」
何?さっきまでのムードは!?
ズカズカと進み、気が付けば学校の近くの駐輪所まで来てしまっていた。
「猛ー!荷物っ」
「・・・」
今にもバイクに跨ってしまいそうな猛を止める。
荷物がまだ教室にある事を伝えると、猛は少し考えた後ポケットから携帯を取り出した。
プププ・・・
「あ?賢?・・・俺と澄子の荷物頼んだ」
・・・へ?戻らないの!?
「ああ。分ってるよ」
さっさと麻生君との会話を終わらせると、私の顎に手をかけた。
「・・・嫌か?」
猛の強くて綺麗な瞳。
吸い込まれてしまいそうな細い、黒い瞳。
・・・今日だけ。
・・・今日だけ、甘えさせて。
「猛の、家に行く・・・」
その言葉を合図に、バイクは走り出した。