「あの・・・」
長いキスが終わり、今までずっと心に引っかかっていた事を言葉にする。
「広子ちゃん、と同じ大学に行くの?」
猛の姿を追う度に視界に入って来た広子ちゃんの存在。
嫉妬するなって方が無理なの・・・。
この気持ちが猛にとって負担になるって分かってるんだけど・・・。
「あー狙ってはいるみたいだな」
優しく髪を撫でながら猛がゆっくりと呟いた。
「・・・何?やきもちとか?」
いつもなら絶対意地を張ってしまうんだけど、今日は素直でいたい。
いつも一緒にいられる訳じゃないんだもん。
一緒にいられる時は素直でいたい。
コツンと猛の肩に頭を乗せ、無言で頷いた。
「すっごい・・・妬いちゃった」
あの時の不安、悲しみ、妬み・・・
思い出すだけで視界が揺らいでくる。
広子ちゃんと猛が談笑する姿を見て、何度家で泣いただろう。
隣にいれない歯がゆさと、猛の隣を奪われていく焦燥感。
色んな気持ちが混ざって涙となって零れてた時期。
ポツ、っと溢れた涙が繋いでいる二人の手に落ちた。
それを感じた猛が、繋いでいない手でギュッと抱きしめてくれた。
「心配すんな。別れてた間もお前の事を忘れてる時なんてなかったから」
猛もいつもそんな事口に出さないのに、素直に気持ちを伝えてくれる。
きっとそれは、同じ事を考えているからだって思う。
一緒にいられる時間が少ない分、思った事は口にしないと伝わらないから。