長い間猛の胸に顔を埋めていると、ネクタイの隙間から見覚えのある物が見えた。


「・・・」


すっと猛のネクタイに手を伸ばして引っ張る。


「何?してーの?」


ニヤニヤと笑う猛。


「・・・」


ジーッと、一点を黙って見つめている私に猛が不思議そうに声をかける。


「澄子?」


「・・・っ」


再び頬に伝わっていく涙を見て、猛がハッっと気が付いたように顔が赤くなった。


「あー・・・」


「猛・・・ずっと?」


猛の首にかかったモノにそっと触れる。


そこには、二つのペアリングがチェーンにかかり光っているネックレスがあった。


もちろんそのペアリングはあの日猛が私にくれて、ずっと二人でつけたいたリング。


別れたときに猛に返したんだよね?


「・・・指輪くらい、一緒にいさせてやろうと思って」


猛がそんな事言うなんて信じられない。


そんなロマンチックなこと、猛がするなんて。


「これがあったから今まで頑張れたのかも」


ネックレスに触れる私の手に、猛が手を重ねた。


どちらからとも無く顔を近づけて目を閉じた。


ゆっくり唇を重ねてお互いの熱を確かめ合う。


離れていた分を取り戻すように何度も何度も角度を変えて深くしていく。


優しい、優しいキスで


不安だった事も、悲しかった事も


全てが消え去って行った。