「澄子ちゃん!」


珍しく、允が声を上げたと思ったら“澄子ちゃん”?


パッと声がした方に顔を向けると、允が焦ったような顔をしていた。



「おい?」


席を立ち、允に近づくと胸倉を掴まれた。


あ?


「タケ、お前最低だな」


一瞬で解放され、トンっと軽く後ろに押される。


「あ?何がだよ」


乱れたYシャツを直しながらそう問いかける。


胸倉を掴まれる覚えは無い。


「今、多分泣いてるぞ。澄子ちゃん」


澄子・・・?ここにいたのか?


「・・・しょうが無いんだよ。澄子も理解してる」


「なんでだよ?なんでそんな中途半端なんだよ、お前」


「あ?中途半端だ?そんなのお前に言われる筋合いねぇよ!!」


先ほどとは逆に、俺が允の胸倉を掴む。


ザワザワと、教室内は騒がしくなる。


「ちょ、猛やめろ」


途中で賢が止めに入ろうとしたが、そんなの聞こえない。


中途半端?


あいつを傷つけて、俺も苦しんで出した答えなんだよ。


「中途半端だろ?中途半端だから泣かせんだろ?」


「あ?お前に何が・・・」


「分んないね。好きな女に待ってろとも言わないお前の心理なんて」


「・・・」


「澄子ちゃんなら、待っててくれるだろ?」


スット胸倉を掴んでいた腕を放す。


「むしろ、待たせてやれよ」


その言葉を聞いて、俺は教室を飛び出した。