そう思い、猛の姿を探して目に入ったのは、
猛と、広子ちゃん。
私の存在には気づかずに二人で談笑している。
広子ちゃんはすごく嬉しそう。
嫌だ、嫌だ。
ギュッと持っているマフラーを握り締める。
彼女でも無い私は、“嫌だ”と思う権利も無いのかな?
二人の間には一冊の参考書があって、それを二人で覗き込んでいて・・・
猛の手には可愛らしいシャーペンが握られていて。
それ、広子ちゃんのペン?
いつも一緒に勉強してるの?
同じ大学を目指すの?
「・・・っ」
「澄子ちゃん!」
絶えられずに、教室を飛び出してとにかく走る。
寒くて冷たい冬を耐えれば、
ポカポカの春が来る。
春が来れば、また笑えるって思ってた。
猛の横で昔のように笑えるって。
でも違うの?
大学に行く猛の隣にいるのは、私ではないの?
・・・私には、もうポカポカの春なんか来ないの?