「澄子!どれにするの?」
クリスマスを控えた12月、私はブランドのお店がそろう百貨店に来ていた。
目的は、マフラーを買うため。
もちろん自分の物ではなく、・・・猛へのプレゼント。
「あ、これだ・・・」
猛が好きなブランドのマフラーを見つけ、手にとって見る。
フワフワっと触り心地が良いし、これなら猛も寒くないよね?
チラリと値札を見ると、思ったよりも予算オーバーだった。
「・・・でも・・・」
受験を頑張ってる猛のためだし、私は推薦で大学が決まってるからこれからバイトも出来る。
・・・買っちゃおうか。
でも、これあげれば嬉しいよね?
「澄子?それにするの?」
千代は、私が持っているマフラーを見て呟いた。
「止めた方が良いよ。澄子」
ニコっと微笑みながらそう言った千代に、疑問を持った。
「どうして?猛、このブランド好きなんだもん!」
「でも、それ高いでしょ?」
「でもでも!猛頑張ってるんだもん!」
持っているマフラーをギュッと握り締める。
フワっと毛が舞うのを感じた。
「澄子・・・昔さ?猛君の誕生日の時も同じ事言ってたよね?」
猛の、誕生日・・・
「秘密でバイトして、高い物をプレゼントした時・・・柚木君喜んだっけ?」
あの時は・・・
“いらない”
「いらないって言われた・・・毎日一緒にいるだけで良いって」
思い出しただけで、涙が出て来る。
猛と私の大切な思い出・・・